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よながひめとみみお

夜長姫と耳男

坂口 安吾

「新潮 第四九巻第六号」1952(昭和27)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,604 字 · 56 页

青空文庫

その指につままれている物が何物であるかということにオレは突然気がついた。

オレはクビをまわしてオレの左の肩を見た。なんとなくそこが変だと思っていたが、肩一面に血でぬれていた。ウスベリの上にも血がしたたっていた。オレは何か忘れていた昔のことを思いだすように、耳の痛みに気がついた。

「これが馬の耳の一ツですよ。他の一ツはあなたの斧でそぎ落して、せいぜい人の耳に似せなさい」

エナコはそぎ落したオレの片耳の上部をオレの酒杯の中へ落して立去った。

★

それから六日すぎた。

オレたちは邸内の一部に銘々の小屋をたて、そこに籠って仕事をすることになっていたから、オレも山の木を伐りだしてきて、小屋がけにかかっていた。

オレは蔵の裏の人の立ち入らぬ場所を選んで小屋をつくることにした。そこは一面に雑草が生え繁り、蛇やクモの棲み家であるから、人々は怖れて近づかぬ場所であった。

「なるほど。馬小屋をたてるとすれば、まずこの場所だが、ちと陽当りがわるくはないか」

アナマロがブラリと姿を現して、からかった。

「馬はカンが強いから、人の姿が近づくと仕事に身が入りません。