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よながひめとみみお

夜長姫と耳男

坂口 安吾

「新潮 第四九巻第六号」1952(昭和27)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,604 字 · 56 页

青空文庫

あんなバケモノが魔よけの役に立たないのは分りきっているのに、そのホコラにすがりついて死ぬ人があるとは罪な話だ。いッそ焼き払ってしまえばいいのに、とオレは思った。オレが罪を犯しているような味気ない思いにかられもした。

ヒメは下界の眺めにタンノーして、ふりむいた。そして、オレに命じた。

「袋の中の蛇を一匹ずつ生き裂きにして血をしぼってちょうだい。お前はその血をしぼって、どうしたの?」

「オレはチョコにうけて飲みましたよ」

「十匹も、二十匹も?」

「一度にそうは飲めませんが、飲みたくなけりゃそのへんへぶッかけるだけのことですよ」

「そして裂き殺した蛇を天井に吊るしたのね」

「そうですよ」

「お前がしたと同じことをしてちょうだい。生き血だけは私が飲みます。早くよ」

ヒメの命令には従う以外に手のないオレであった。オレは生き血をうけるチョコや、蛇を天井へ吊るすための道具を運びあげて、袋の蛇を一匹ずつ裂いて生き血をしぼり、順に天井へ吊るした。

オレはまさかと思っていたが、ヒメはたじろぐ色もなく、ニッコリと無邪気に笑って、生き血を一息にのみほした。それを見るまではさほどのこととは思わなかったが、その時からはあまりの怖ろしさに、蛇をさく馴れた手までが狂いがちであった。