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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
それにひかされて、ついこんな間の抜けた口をきいたが、それが愚問であるのに、すぐ気が附きはしたものの弁解がましいことはしたくなかった。友人は寂しく笑った。
須藤は背は高かったがひどく痩せぎすなたちで、前歯が虫に食われて味噌歯になっている。
その味噌歯がこの男の面貌に愛敬を添えていた。それでも寂しく笑った時に、鶴見はそこに若者らしくない窶れを見て取った。
鶯によい鳴きぐせをつけるにはその方法がいろいろある。その躾かたについての話を一わたりきかされた。「何につけても修行が大切だね。」鶴見はそういおうとして、遂にその言葉を口に出さずにしまった。
鶯の修行の話を長閑にして、こうやって静かに寝ていられるところを見ると、友人はもはやこの家の立派な若主人である。そしてそれに相応した待遇を受けている。鶴見がこういうような生活ぶりを見たのは始めてである。しかしこの時は、学生の身分としての生活ぶりに懸隔の差が余りに多かったせいか、ただもの珍らしいと思ったばかりで、別段の感情は起さなかった。
須藤はそういう家庭に育っただけに、どことなく貴族的で、わざとらしくない品位が具っていた。