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ゆめはよびかわす

夢は呼び交す

蒲原 有明

――黙子覚書――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页

青空文庫

その穴に、喜海と呼ばれた弟子は一つ一つ種ものを投げこんでいる。傍からでは、それがどういう種であるかは想像されない。麦や豆類とはちがって、もう少し大振りな種である。

馬蹄の跡の窪だまりに放りこまれた種は、喜海の手で丁寧に土がかぶせられる。見る見るうちに、こうやって一反歩の種播は終りを告げる。

蒼みがかった夢の雰囲気がますます濃やかになる。今やあたりは真青に染められて、そこからほのかの匂いがたっている。夢というものにも鋭敏な感受性があるにちがいない。そしてみずから発つ芳香におのが官能を酔わしめて、ひそやかに楽しんでいる。それが、ほのかに、かすかに、香に立ってきこえてくるのであろう。

工作を終った上人とその弟子は、その畑地を見わたして快心のえみをたたえている。

「上人さま、早いものでございます。ご覧ください。あそこあたりはもう芽を吹きだしてまいりました。」

「おお、そうか」と上人はいった。「種も粒選りであったし、日もよかったし、気分もすぐれていたし、それにここの畑土は肥えているのだ。三拍子も四拍子も揃っていたからだな。」ゆっくりした口調である。

喜海は「ごきげんで結構でございます。