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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
種子開顕
乗杉がいったように万巻は甚だ誇張であるが、執著の書灰が蝶と化して、その幻想をいよいよ掻きたてて、ちらちらと舞を舞っているのが見えるようである。鶴見は現在自分の内部に沸き立っているこの幻想を、少し離れたところからながめていられるようになっている。それがせめてもの心遣りであろう。
種子開顕
珍らしく景彦が遣って来た。景彦は人には姿を見せたことがない。ただ鶴見にだけはその面影が立って見えるのである。笑いもするし、怒りもするし、また生真面目にもなる。その度ごとに速に変る表情を鶴見は目ざとくたどって、少しく不気味に思うこともある。どうかすると彼は神々にも鬼畜にも、忽ちのうちに変貌する。常に分身であり、伴侶であり、かつまた警告者である。気随気儘なしれもので、いつ遣ってくるとも予想されない。とにかく彼の行動は出没自在である。きょうもどこからともなく、ついと入り来って鶴見と対座した。
鶴見も心得ているので、微笑しながら、「やあ、暫くだったね」といって彼を迎えた。
「暫くでした」といったきり、景彦はあいそもこそもない態度を取っていたが、ふと気附いたという口振で、「いや、あなたも随分不自由な生活をしてお出になる。