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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
鶴見もついさっきその店の前を通ってきたのである。スタンドの上にコップが数個並べてあり、その前に椅子が二、三脚置いてあるのが見える。設備といえばただそれだけに過ぎない。一杯売の外には多量に分けられぬというのを、近所の誼みでと無理に頼み込んで、時々一升壜を持たせて買いに遣る。鶴見は平生の飲物としては焼酎を用い、焼酎よりもこの泡盛が何よりの好物である。
泡盛の話を最初にしかけて来た商人風の男も、だんだん聞いてみると、この横町の店に毎日通っているということが分った。きょうは既に一杯引っ掛けて来たらしく、手附や話振にどこやら酔態があるようにも疑われる。そのうちに浴客がたて込んできたので、鶴見はそこそこに湯から上った。もっと詳しく話を聞けば同気相求めて佳境に入ったでもあろうにと、それなりになったのを、口惜しくも思っている。
泡盛の前話はそれで終る。しかるに鶴見の記憶は聯想の作用を起して、この時はからずも往年の親友の一人が鮮やかな姿を取って意識の表に押し出される。ここに泡盛の後話が誕生する。
その親友の一人がにこにこと笑って、「おい居るか」といって不遠慮にはいって来る。