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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
実行だよ。不思議というのは実行の成績に待つべきものだ。こういっておれを言下に痛罵するかも知れない。
杜甫に「飲中八仙歌」がある。気象が盛んで華やいでいる。強いて較べるのではないが、真淵の「うま酒の歌」においても同じことがいえる。そこで鶴見はこう考えている。詩には何を措いても気象が立っていなければならない。丈高いすがたである。どんなに柔艶な言葉を弄しても、底の底から揺ぎのないいきざしが貫き通っていなくてはならない。それを気象が立つというのである。おのずから生の華やぎが作品の表に見えて来ねばならない。それがないのは畢竟飢えた詩である。そんな考が不意に射出した征矢のように、鶴見の頭脳のなかを一瞬の間に飛び過ぎた。
戦災にかかってからは、いや更に荒されたまま、痺びらされたままになっていた頭脳が、ここに漸く本然の調子を取り戻す機会を得たことになる。この回復の徴を齎した「うま酒」はあたかも霊薬の如きものであった。霊薬の効験は著しかったといって好い。鶴見はそれをよろこんで、将来に何物をか期待する予感を抱くようになった。
今直ぐに手を伸せば把握される何物かがあるようにも思われる。