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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
かれは少年時より仏教については関心を持っていた。その志を今果そうとしているのである。他がもしヂレッタントだといって卑しめればかれは腹を立てただろうが、かれみずからはどうかすると、おれはヂレッタントだといって笑っていた。そういう時のかれには職業的文士というものが何物よりも目障になっていたのである。
詩作にはすでに興味を失っていた。かれ自身としても詩人になろうと思いたったのが間違いのはじめで、詩だけを思うままに作っていればよかったのだと、老年になったかれはしきりに悔んでいる。その上に他と一しょになって物を言うのをひどく忌むのである。詩社を結ぶなんぞということは、てんでかれの頭にない。一生涯孤立は避けられもせず、また避けようとも思わずに、別にしでかしたこともなく、ずるずると今日に及んだのである。これが鶴見の経歴といえば経歴のようなものである。
それに、これは余談であるが、鶴見は十年ばかり前から聾になっている。単に耳が遠いというだけではない。殆ど全く聞えないのである。
鶴見が聾になる直ぐ前のことであった。かれは老妻の曾乃に向って、「お前はどうかしたのかね。