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おおきなばけもの
大きな怪物
平井 金三
「新小説 明治四十四年十二月号」春陽堂、1911(明治44)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,506 字 · 3 页
妖怪とか変化とか、生霊とか死霊とか種々な怪物に就ては度々前に話をしたり書いたりしたから改めて申すまでも無かろうから今度は少し変った筋の話をする事にする。
一体怪物と云えば不思議なもので世間にあまり類と真似の無いもののようだが、よく考えてみるとこの世の中にありとあらゆるものは皆怪物になる、ただ私達の眼が慣れっこになったので怪物に見えなくなってしまったのに過ぎない。それが証拠には火鉢の中にある火を御覧なさい、これが第一怪物である、黒くなっているうちは弄っても熱くないが火になって赤くなれば触ることさえ出来ない、科学者に云わせると分子の運動とか何だとか理窟を附けるがよく考えれば不思議なもので確かに怪物である、庭に咲いている菊の花を嗅いでみるといい芳香がする、この花がまた怪物である、云うに云われない菊特有の香気はどうして出来たものか、これも深く詮索をすれば結局判らない事になってしまう。次に鐘を叩くとカアーンと音がする、その音は影も形もなく駈るように遠くに響いて行く、人間の拵えた説明では到底その理由が満足に判らない、これも確かに怪物である。
かく種々怪物の例を挙げて来たが、こう云う我々人間こそ最も大きな怪物である。