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おおとりものせんにんつぼ
大捕物仙人壺
国枝 史郎
「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页
「実は急に逢いたくってな、それで呼び出しをしたやつさ」
「用でもあるの? お話しおしよ」
「ねえ紫錦さん、俺らと一緒に、ちょっとそこ迄行ってくれないか」四辺を憚ってトン公は云った。
「行ってもいいがね、どこへ行くの?」
「金龍山瓦町へよ」
「浅草じゃないか、随分遠いね、それにこんなに晩になって」お錦は怪訝そうに云うのであった。
「それがね、至急を要するんだ」
「へえ不思議だね、何の用さ」
「逢いてえって人があるんだよ。是非お前に逢い度えって人がな。それが気の毒な病人なんだ」
「誰だろう? 知ってる人?」
「お前の方じゃ知らねえだろうよ。だが確かな人間だ。実は俺らの親方なのさ」
「お前の親方? 玉乗りのかい?」
「ああそうだよ。葉村一座のな。俺らその人に頼まれて、お前を迎いに来たってやつよ」
トン公はそこで気が付いたように、
「だがお前は出られめえな、なにせ大家のお嬢さんだし、もう夜も遅いんだからな」
「行くならこのまま行っちまうのさ」
「だが後でやかましいだろう?」
「そりゃあ何か云われるだろうさ」
「困ったな、では止めるか。止めにした方がよさそうだな」
「くずくず云ったら飛び出してやるから、そっちの方は平気だよ。