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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

「この破落戸!」と一喝した。

しかしこれは悪かった。破落戸のうち四五人の者が、急に彼の方へ向かって来た。そうして後の四五人は、お錦を宙へ吊るすようにして、一散に丘の方へ走り出した。ならずものなどと声をかけずに、忍び寄って一刀に、彼らの一人を斬ったなら、彼らは恐れて逃げたかもしれない。

義哉へ向かった破落戸達は、いずれも獲物を持っていた。そうして人数も多かった。無手であしらうのは困難であった。そこで義哉も刀を抜いた。

義哉は芸人ではあったけれど、武術もひととおりは心得ていた。しかし勿論名人ではなかった。とはいえ四五人の破落戸ぐらいに、退けを取るような未熟者でもなかった。

しかし彼の心持は、この時ひどく混乱していた。娘を助けなければならないからであった。

彼は平和好きの性質からいえば、人を斬るのは厭であり、峯打ちぐらいで済ましたかったが、しかしそうはいかなかった。破落戸どもの抵抗は、思ったよりも強かった。

「チェッ」と一つ舌うちをすると、真先に進んで来た破落戸の右の手首へ斬り付けた。

侍でない悲しさに、斬り付けられた破落戸は、ワーッと叫ぶと尻もちを突いた。