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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

すると、その時縁側の方から、微な衣擦れの音がした。

「お花か※(感嘆符二つ、1-8-75)」と義哉は気不味そうに云った。

「はい、お呼びかと存じまして」

「呼びはしない。向うへ行っておいで」

お花の立去る気勢がした。

鍵を義哉へ預けたまま、お錦も間もなく帰って行った。

その翌日の夕方であった。

神田小川町の友蔵の家へ、お花はとつかわと入って行った。

「兄さんこれなのよ、手箱の鍵は」こう云ってお花は鍵を出した。

お錦が義哉へ預けて行った、例の手箱の鍵であった。ちょっとの隙を窺って、それをお花が盗み出したのである。

「どれ」と云うと友蔵はお花の手から鍵を取った。それから立ち上って隣部屋へ行き、地袋から手箱を取り出して来た。

固唾を呑まざるを得なかった。何が箱から出るだろう? 高価な品物であろうかも知れぬ。それとも恐ろしい秘密だろうか?

友蔵は鍵を錠へかった。と、カチリと音がして、箱の蓋がポンと開いた。

一葉の地図が入れてあって、そうしてその他には何にも無かった。

「地図じゃないの、つまらない」

お花はガッカリして声を上げた。

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「そうでねえ」と友蔵は云った。彼は岡っ引という商売柄、こういうものには興味があった。