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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

「一世一代の失敗かな。友蔵親分丸損かな。ほんとにほんとに莫迦にしていやがら」

しかしどんなに悪口を云っても、それに答えるものさえない。自分自身が悪口を云い、自分自身が聞くばかりであった。

夜は次第に更けまさり、家の内外ひっそりとした。

「考えていたって仕様がねえ。こんな晩は寝た方がいい。明日は早速ご出立だ。お花の畜生め覚えていやがれ。彼奴さえあんな物を持って来なけれりゃあ、こんなへマは見ねえんだ。江戸へ帰ったらあいつを呼び付け、みっしり叱ってやらなけりゃならねえ」

夜具を冠って寝てしまった。

いわゆる丑満の時刻になった。

と、間の襖が開き、何かチロチロと入って来た。それは一匹の大鼬であって、颯と床間へ駈け上ると、壺と地図とを両手で抱え、それから後足で立ち上り、静かに隣部屋へ引返した。

友蔵は勿論知らなかった。しかし翌日発見した。発見はしたが驚かなかった。「へん、間抜けな泥棒め、盗むものに事をかき、あんなつまらねえ物を盗みやがった」

それで、却ってサバサバして、江戸をさして引返して行った。

27

ここは深川の木賃宿である。香具師の親方の「釜無の文」は、手下の銅助を向うに廻し、いい気持に喋舌っていた。