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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
24 流転の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页
これは、新太郎として、実際、そうも見えたのだろうし、また必ずしも軽蔑の意味ではなく、調子に乗って言ったのだろう。だが、この一言が、忽ち宿の主人の口から、剣士たちの耳に入ったから堪らない。
「憎い修行者の広言、このまま捨て置いては、長藩の名折れになる」
かれらは大激昂で新太郎の旅宿を襲撃しようとする。老臣たちが、それを宥めるけれど聞き入れない。止むを得ず、急を新太郎に告げて、この場を立去らしめた。新太郎は、それに従って、一行を率いて、その夜のうちに九州へ向けて出立してしまったから、わずかに事なきを得たが、あとに残った長州の血気の青年が納まらない。
「よし、その儀ならば、九州まで彼等の跡を追っかけろ」
「彼等の跡を追いかけるよりも、むしろ江戸へ押し上って、その本拠をつけ。九段の道場には、彼の親爺の弥九郎も、その高弟共もいるだろう、その本拠へ乗込んで、道場を叩き潰してしまえ」
長州の青年剣士ら十余人、猛然として一団を成して、そのまま江戸へ向けて馳せ上る。その団長株に貴島又兵衛があり、祖式松助がある。
そこで、彼等は一気に江戸まで押し通すや否や、竹刀と道具を釣台に舁のせて、麹町九段坂上三番町、神道無念流の師範斎藤篤信斎弥九郎の道場、練兵館へ押寄せて、殺気満々として試合を申し込んだものだ……