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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
24 流転の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页
ないことをやり出しても、それが時間を経ると、相当の意義を齎して来ることもあるのだから、どうも仕方がない、御意のままに任せるよりほかは――
そこで、武者修行を主張する道庵にも相当の自信があるので、吾々がそう危ながるほどの危険はないのかも知れない。また万一の危険の際には、及ばずながら自分が飛び出そうとの決心もあるから、賛成はしないが、強いて反対するのでもありません。
米友を口説き落したつもりの道庵は、いよいよ有頂天で、多年の慈姑頭をほごして、それを仔細らしく左右に押分け、鏡に向ってしきりに撫でつけているところは、正気の沙汰とも見えません。被布なんぞはニヤけていけねえ、脇差もこんな短けえんではいけねえ――道庵は衣裳、持物の吟味までも始めたが、肝腎の道場訪問の儀式作法に至っては、研究する模様もなし、米友に訊ねようとの気色も見えない。
総髪を左右に押分けた急拵えの張孔堂正雪。
悪い洒落だ……と米友も呆れましたが、これというのも、あの祭文語りを聞いて昂奮したせいだろう。祭文が無暗に武勇伝を語って聞かせるのも考えものだと、米友が思いました。
道庵が、どうしてこうも武者修行をやってみたいのだか――その最初の動機は、いま米友が心配しているところの如く、祭文語りから来たのも因縁でありますが、これには奇にして正なる一場の物語