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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

24 流転の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页

青空文庫

そこで迷児の道しるべの前に立っていた米友が、後ろへ隠れて人波を避ける。幸いにして米友は柄が小さいから、道しるべの蔭へ隠れた日には、少しも人波の邪魔になるということがありません。人波の方でもまた、米友と、道しるべとを捲き残して、大水のように過ぎ去ってしまえば何のことはないのだが、ここぞ、この町並ではほぼ目貫のところでしたから、そこで行列も御輿を据えて、器量いっぱいのところを見せなければなりません。

米友にとってはこれが迷惑です。早くこの人波が流れ去ってしまうことを希望していたのに、流れ来った水がここで湖となってしまい、自分と、道しるべとは島にされたならまだいいが、湖底に埋没されたような形になって、群衆は米友の頭の上でしきりに踊り騒いでいる。

ぜひなく米友は、道しるべの蔭にいよいよ蹲って、ともかく、この人波の停滞が崩れ去るのを待って、おもむろに身の振り方をつけようと覚悟しました。

こうして人波に埋没されている米友にとっては、何の面白くもないお祭り騒ぎ――だが人の面白がるものにケチをつけるにも及ばねえが、いいかげんにしてもれえてえものだな――と思って辛抱している。