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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
24 流転の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页
クワイ頭の専売物でなく、惣髪にして二つに撫でつけた塚原卜伝の出来損ないのような親爺が、まさか長者町の道庵だとは思われませんから、やはり、変な親爺が、世話を焼いているなぐらいの程度で、この景気の見送りをして、またも障子を閉してしまいました。
一方、宇治山田の米友は、浅間の町の迷児の道しるべの辻に立って、しきりに地団駄を踏んだり、嘆息をしたりしている。
ああしたような事情で善光寺を立ち出で、善光寺から稲荷山へ二里、稲荷山から麻績へ三里、麻績から青柳へ一里十町、青柳から会田へ三里、会田から刈谷原へ一里十町、刈谷原から岡田へ一里二十八町、岡田から松本まで一里十八町を通って、松本の城下へ入り込んで見ると、前いうような景気でしたから、道庵がまたはしゃぎ出し、浅間の湯というのへ泊ることだけは打合せておいたが、とうとう途中で飛ばしてしまいました。
止むことを得ず、米友は約束の浅間の地に着いて、町並に怒鳴り歩いてみたが手答えがなく、そこで、今は株を守って兎を待つよりほかの手段はなくなりました。
町の辻の迷児の道しるべのあるところに、悄然と立った宇治山田の米友。
人の気も知らないで、賑やかしい花車屋台の行列は早くも米友の前まで押寄せて来ました。