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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

24 流転の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页

青空文庫

有志たちから受ける尊敬心を裏切らずに押して行く交際ぶりのまじめさが、米友をいたく驚かせました。これは本当の先生だ! 今まで嘘の先生と思っていたわけではないが、こうして押しも押されもせぬ先生で通れるのに、あんな馬鹿騒ぎをして、われと格を落す先生を気の毒と思わずにはいられません。

やがて松本の城の天守閣の上まで見せてもらうことができました。

壮大なる松本城天守閣上のパノラマ。あいにく、この日は曇天で、後ろのいわゆる日本アルプスの連峰は見えず、ただ有明山のみが背のびをしているように見えます。

道庵は酔眼朦朧として眺める。米友は眼をみはって高い石垣の下の濠を見下ろす。城を下って城を見上げて、説明を聞くと、加藤清正も熊本城を築く前に来って、この城を見学して帰ったという。天守閣の棟が西に傾いているのは、義民多田嘉助が睨んだからだという。

道庵は、そこで、どうした風の吹廻しか七言絶句を三つばかり作って、同行の有志家たちに見せました。

それは、いよいよ米友を驚嘆させて、おいらの先生は、あんな四角な文字まで並べられると、非常に肩身の広い思いをさせ、また同行の有志家たちも、即席に漢詩を作る道庵の技倆に感心をしたらしいが、詩そのものは道庵の名誉のためにここに掲げない方がよろしいと思う。