轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
30 畜生谷の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,962 字 · 145 页
「言ったよ、頓馬と言ったのが悪かったのかえ、人の足を踏んで、御挨拶の一つもできぬ奴は、頓馬だろうじゃないか」
「わりゃ、天下の力士を知らんか?」
そこで、物争いに火がつきました。だが、この物争いは火花が散るまでには至りません。
それは、お角さんの気合いが角力取を呑んでしまったというよりは、天下の力士というものが、こうも多数に集まっていながら、一人の女を手込めにしたという風聞が立っては、外聞にはならないのみならず、人気にも障るということに気がつかないわけにはゆかなかったからでしょう。
女というだけに、そこにどうしても優先権があるようです。しかし、また一方から言えば、天下の力士ともあるべきものが、女一人をもてあましたとあっては、外聞はとにかく、この場の引込みがつかないという事情もあるようです。
お角さんは、それをせせら笑いながら、手廻りのものを押片附けて、待たしてある駕籠屋を呼ぼうとすると、この時、店の一方で遽かに、すさまじい物争いが起りました。ほんの一瞬間の言葉咎めから争いが突発したものらしく、さすがのお角さんさえ、度胆を抜かれて振返ったくらいです。