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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
33 不破の関の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页
役者が上だから、おばさんとしても多少の歯ごたえはあるだろう……たぶんその辺の当りがなければと、あらかじめイヤなおばさんはイヤなおばさんとして、相当のおめかしもしなければならない。いいかげん水びたしにされたり、焼かれたりしたずうたいを、なんぼなんでも、このまんまで色男の前へ出されもすまいじゃないか――そこでおばさんは焼跡の土をせせくって、何やら相当の身じまいにうきみをやつしているものだろうか。
ところが、蘆葦茅草の中の一方がガサガサとザワついて、そこから、そろそろと忍びよる一つの物がある。
幽霊もまた友を呼ぶのだろうと見ていると、その蘆葦茅草の中がザワついたと見る瞬間、身じまいをしていたはずのイヤなおばさんのお化けが、びっくり仰天して立ち上るや、転がり、震動して、その場を逃げ出してしまったのはあんまり意気地がない。
その意気地のないお化けの図体が、こちらの水たまりのところで踏み止まったのを見れば、なんの……これはイヤなおばさんその人の亡霊でもなんでもない、以前、一度見たことはあるが、根っから見栄えのしない、いつぞやあちらの焼跡の柳の下で、どじょうを掬っていた紙屑買でありました。