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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
33 不破の関の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页
それは、この清洲の城、あの背後に俗に山吹御殿という一廓があって、かなり広大な家屋敷を持っているが――こんどそこの当主が肥後の熊本へ旅立ちをする。都合によっては長くかの地で暮すようになるかも知れない。そこで相当の留守居をつけてこの屋敷を引払うことになった。その留守番に、否応いわさず、自分が引受けさせて、熊の養育を托して置いてやる。あそこならば邸内は広いし、熊一匹養いきれないほどの身上ではなし、留守居の人間も親切であり、動物好きだから、むしろ喜んで面倒を見るにきまっている。
それを聞くと、米友が深く頷いてしまいました。
やがて米友が熊の檻の大八車を引き出すと、岡崎藩の美少年が、そのあと押しをして、えんやらやあと山吹御殿に引き込んで行くのを認めます。
十三
それからまたやや暫くの後、この屋敷から現われた二人の者の一人は、空身になった米友に相違ないが、もう一人の方は、これも確かに岡崎藩の美少年には相違ないが、これだけは風采が全く変っている。
米友は依然として米友、車を曳かないだけの米友ですが、美少年は饅頭笠に赤合羽といったような、素丁稚姿にすっかり身を落している。