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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
つまり、食えるものは食い尽した者共の催しであるから、集まって来た者の人格のほども、ほぼ想像がつくのであって、神尾に幾分割引をした程度の者か、或いはそれにをかけた程度のものが集まっていると見れば差支えないが、さりとて、相当堅気のものも好奇で寄って来ている。
悪食には、品質を主とするものと、趣向を先とするものがあって、品質を主とするものには、蜥蜴の腸だの、蛇の肝だの、鰐の舌ベロだのといって、求めても容易に得られざる悪食を持寄って、そのあくどい程度に於て優劣がある。趣向を主とするものには、材料そのものは、あえて珍奇であることを必要としない、その材料の取扱い方によって、悪食の気分を豊富にする。
今日の会は、その後者を撰んだのでありました。すなわち材料そのものは、つとめて通常の材料をとり、これをできるだけ嘔吐を催し、嫌悪を起させる悪食に変化して食わせることに腕を見せる――というのが、今日の趣向であったのです。
そこで、みな相当に腕によりをかけて、その趣向を充たさせて、今か今かと待構えているうちに、会員の一名、神尾が来ない。それを待侘びているうちに、玄関のけたたましい叫び――人間が一人ころがり込んで、息が絶えてしまったのです。