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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
ただ、この際、仙台を起点としての自分の足心で標準を定めてみるばかりだ、と七兵衛は、自分の走った程度と、方角を、頭の中へ縦横に線を引いてみて、現在の地点が、仙台からおおよそどの方角に、どのくらい離れているということの測定にかかってみると、突然、
「なあーんだ、ぱかばかしい、ここは安達ヶ原でも、黒塚でもありゃしねえ」
と自ら嘲笑いました。
どうして、どうして、安達の黒塚なんぞは、もう疾うの昔のことだ――ここは黒塚より何十里、何百里も奥へ進んでいる。奥州へ来て、広い原さえ見れば安達ヶ原だと思い、一つ家がありさえすれば鬼の棲家だと想像する自分の頭脳の御粗末さ加減に呆れ返る。
ここが、安達ヶ原でも黒塚でもないという考えは、七兵衛もようやく自分の頭でわかりましたが、鬼のことがまだわからない。安達ヶ原や黒塚は、自分の頭だけの想像のあやまりだが、鬼が出た! ということは、たしかに、今そこで現実の人間たちの叫びであったのだ。現に、ここに集まっていた者がみな出動したのは、その鬼のためだ。安達と、黒塚と、一つ家は消滅したが、鬼の問題は解消しない。重ね重ね変な境に追い込まれたものだなんぞと考えているうちに、つい、うとうとと不覚の眠りに落ちかけようとする。