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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

37 恐山の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页

青空文庫

ぜひなく肩のところへ手をかけて、ゆすぶりながら、

「モシモシ、モシ、お医者様」

と呼び起したが、ちょっとやそっと、ゆすぶったのでは、手ごたえがありそうもないから、やや荒らかに、ゆすぶりかけて、

「もし、お医者様――お医者様、こんなところへゴロ寝をしては、医者の不養生でござるぞよ」

ぐいぐいとやったものですから、ようやく気がついたと見えて、酔眼をポカリと開き、

「ムニャ、ムニャ、ムニャ」

と言いました。

「しっかりなさい、ここは寝るところではござらぬぞ」

「ムニャ、ムニャ、ムニャ」

と二三度唸ったかと思うと、すっくと立ち上りました。

百九十一

ようやく呼びさまされた道庵先生は、あわただしく起き上り、

「これは、どうも、いやはや、大変に失礼を致しました、どうぞ、御容捨にあずかりたい、年甲斐もなく、少々食べよったものでござるが故に、あしからず、どうも、はや」

と非常に恐縮して、そわそわしているものですから、青嵐も気の毒がって、

「いや、御心配にはおよびませぬ、お休みになる分にはいっこう差支えござらぬが、夜気に当っては毒と存じ申した故」

「いやどうも、年甲斐もなく、それに職業の手前、医者の不養生を如実にお目にかけて、何ともはや汗顔至極……」