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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
41 椰子林の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页
と言って、岡野は君子人だが、その君子人が刀を抜いて、首くくり松の首くくり松たる所以の、そのくくりよく出ている松の枝を切りかけたんだ。
そこで、おれが、あわてて、これこれ岡野、松はういもの辛いものというから、松を憎がるのはいいが、その松は世間並みの松と違って、公儀御堀の松だぜ、一枝を伐らば一指を切るというようなことになるぜ、めっそう重い処刑に会うんだぜ、それがいやだから、みんな松は憎いけれども、伐るのが怖い、よって今まで、こうして人命殺傷をほしいままにしつつのさばっているのだ、君にしてからが、めっそうなことをすると、前途有為の身体に縄がかかるぜ、と言って聞かせると、岡野が、
「なあに、お咎めがあるならばあれ、いやしくも人命を奪う植物をそのままには差置けぬ、罪はおれが着るから、貴様も手伝え」
と言うから、よし来た! と刀を抜いて、枝をブチ切ってしまったよ。もう、首が括れない、あれへ来て死神に招かれる奴もあるまい、いい人助けをしてやったぜ。
だが、岡野には感心したよ、おれが助けた奴を、またわざわざ助けに来る義心がエライ上に、あの君子人のくせに、刑罰を覚悟で悪魔払いをしようてんだから見上げたもんだ――五郎魔は五郎魔らしい身の上話をして、座興が湧いたから、第三次としてこれから吉原へ行こうと言い出したのを、無論、それを