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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

41 椰子林の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页

青空文庫

姿よりはその健康な肉体に魅せられたものだが、その踊りというのはまだ見参しない。早くそれを見たいものだ。

年はよれども

まだ気がわこて

若いあねごのそばがよい

水々しい老尼は、自分を唄っているのかひとごとか、手ぶり、足ぶり、歌の声までも浮き立って、さして行方は花の大原、花尻の森の忍びの踊り。

森の中には、踊り疲れる人ばかりではない。竜王明神のほこらには、烈しい嫉妬の神が待っていることを知るや、知らずや。この年老いて、そうして省みることを知らぬ水々しい雌蝶と、老いたりというにはあらねど、生きたりというにはあまりに痩せた雄蝶とは、年甲斐もなく、浮かれ浮かれて、花尻の森、源太夫の屋敷あと、且つは嫉妬の神の隠れた竜王明神の祭りの庭の赤い火に向って行くのが危ない。

七十一

その夜、大原三千院の来迎院の一室で、声明学の博士が、季麿秀才を前に置いて物語りをしておりましたが、

「こんな話をすると、君たちは、なにを子供だましのと思うか知らんが、だまされる子供が幸いで、だまされない現代人が不幸であることを思わなければなりませんよ」

この秀才は、子供のように素直なところのある青年でありましたから、博士の言う意味がよく呑込めました。