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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

41 椰子林の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页

青空文庫

だから、行ってみな、変った人相を見るだけでもためになるぜ。手前も甲州無宿のがんりきの百とやら、相当啖呵の切れる男じゃねえか、なにも中納言と聞いて、聞きおじをするような柄でもあるめえ」

不破氏に、こんなふうに油をかけられて、がんりきの百がまた躍起となりました。

「ようがす、行きますとも、そう聞いて後ろを見せた日には、甲州無宿が廃りまさあ、一本だけ不足だががんちゃんの腕のあるところを、その洛北岩倉村というので見せてやりてえ、さあ出かけましょう」

ここで、張りきって力み返ったのは現金なものです。

「まあ待て、今からでは遅いから、今晩は泊って明日」

この時、もう日の暮れ方で、関守氏は炉辺の火を取って、座右の行燈に移し入れました。

十

逸るがんりきを控えさせて置いてから、不破の関守氏は、醍醐から帰ったはずの女王様の御機嫌伺いにと本邸の方へ伺候しましたが、ほどなくわが庵へ戻って来てから、改めて控えのがんりきを呼び出して、わが庵の炉辺の向う際へ据えつけ、さて言うよう――

「明日は、しっかりやってくれ、がんりき名代の腕を上方衆に見せてやってくれ、頼むよ。