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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

34 白雲の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页

青空文庫

観瀾亭を中心として続々集まった諸士、顔役も、さすがにこの点は抜かりがありませんでした。

一方、御宝物が厳重なる守護をもって送り返される前後より、たちどころに非常線が張られたのは申すまでもありません。

「まだ決して遠くは逃げていない」

と、炭部屋もどきに、縁の下の藁の寝床に手を触れてみた一人の諸士が言う。

「さりげないことにして網を張っていれば、戻って来る」

そこを附込んで、虚をもって実を討たんと策を立てるものもある。

それに応じてまた一方、いずれにしても、この非常線の非常なることを知って、それに処することに抜かりのあるべき七兵衛でないことはわかっているが、事が全く予期しなかった流れ矢一筋から来ているだけに、存外、転身の自由が利かないおそれはあります。

でも、その日の暮れるまでは、犯人がつかまったというなんらの報道もなく、仙台城下の内外の隠密が、密々のうちにいよいよ濃度を加えることほど、彼の身元が心もとないと言わなければなりません。

十四

こういう空気の真只中へ、駒井甚三郎がおともを一人連れただけで、仙台城下へ乗込んで来て、別段咎めだてを受けなかったということは、不思議に似て不思議ではありません。