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だいぼさつとうげ
大菩薩峠6
中里 介山
中里介山『大菩薩峠6』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,112 字 · 362 页
そうなると道庵は面白半分に、駄々を捏ねる気になって、足をバタバタさせながら、行かじとします。けれども、道庵を引張りに来た男は、たしかに一生懸命で、これもやはり地廻りの一人でありましょう、道庵をそれと知ったもんだから、自分も怖い中から飛び出して来て、何も知らない道庵のために、行手の危険を防いでやろうとする親切であります。
それも口を利くとあぶないから、黙って遮二無二、道庵を引張り込もうとするが、道庵はいま言う通り、ワザと足をバタバタさせて、駄々を捏ねるのだから始末におえません。親切に引張り込もうとした男は、いよいよ焦って力の限り引張ると、道庵はまた、いよいよ面白がって、
「なにがしは平家の侍、悪七兵衛景清と、名のりかけ、名のりかけ、手取りにせんと追うて行く……三保谷が着たりける、兜の錣を取りはずし、取りはずし、二三度逃げのびたれども、思う敵なれば遁さじと、飛びかかり兜をおっとり、えいやと引くほどに……」
面白がって道庵は「景清」の謡をおっぱじめました。
「先生、謡どころじゃありません、やってますぜ、やってますぜ、斬合いが始まってるんだから、早くこっちへ逃げておいでなさいまし」