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だいぼさつとうげ

大菩薩峠6

中里 介山

中里介山『大菩薩峠6』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,112 字 · 362 页

青空文庫

十一

これらの遊び人どもが、がんりきのあとを慕ってどこまでも追いかけるのは、かなりしつこいものです。

十一

この時分、高尾山薬王院の奥の院に堂守をしていた一人の老人がありました。

以前、不動堂がまだ麓の登り口にあった時分は麓にいたが、不動堂が頂上の奥の院へ遷されると共に、この老人もまた頂上へ移りました。

この老人の前生を聞くと、やはり一個の武芸者であったようです。少壮の頃より諸国を修行し、年老いてここの堂守となりました。齢はもう七十を越しているから、武芸の話は問う人でもなければ滅多にすることはないが、発句を好んで自らも作り、人を集めては教えておりました。麓にいる時分にはこの老人を中心として、よく運座が催されたものですけれども、頂上へうつってはそのことがありません。発句の代りに一陶の酒を楽しんで、ありし昔の夢に耽りながら、多年の間、山上でひとり夜を明かすことを苦なりとはしていません。

ある晩――ちょうど、十六日の月が東から登って、満山ことごとくその月光を浴びた夜半のことであります。この奥の院近くに人の足音を聞きましたから、老人は坐ったまま居間の扉を押開いて、傍らにあった瓶子を取って逆しまにし、その水を外へこぼすと、その傍らを風のように通り抜けた人があります。