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だざいおさむじょうしこう
太宰治情死考
「オール読物 第三巻第八号」1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,715 字 · 10 页
文化の高まるにしたがって、人間は迷信的になるものだ、ということを皆さんは理解されるであろうか。角力トリのある人々は目に一丁字もないかも知れぬが、彼らは、否、すぐれた力士は高度の文化人である。なぜなら、角力の技術に通達し、技術によって時代に通じているからだ。角力の攻撃の速度も、仕掛けの速度や呼吸も、防禦の法も、時代の文化に相応しているものであるから、角力技の深奥に通じる彼らは、時代の最も高度の技術専門家の一人であり、文化人でもあるのである。目に一丁字もないことは問題ではない。
高度の文化人、複雑な心理家は、きわめて迷信に通じ易い崖を歩いているものだ。自力のあらゆる検討のあげく、限度と絶望を知っているから。
すぐれた魂ほど、大きく悩む。大きく、もだえる。大力士双葉山、大碁家呉八段、この独創的な二人の天才がジコーサマに入門したことには、むしろ悲痛な天才の苦悶があったと私は思う。ジコーサマの滑稽な性格によって、二人の天才の魂の苦悩を笑殺することは、大いなるマチガイである。
文士も、やっぱり、芸人だ。職人である。専門家である。職業の性質上、目に一丁字もない文士はいないが、一丁字もないと同様、非常識であっても、芸道は、元来非常識なものなのである。