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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

リーロフになりすました太刀川は、もうすっかり肚をきめて、きびきびと号令をかけるのだった。

「ほら、むこうに大きな古錨がある。あのくろい岩のかげだ。あの古錨に、こいつをくくりつけておけ。いまに海坊主のえじきになるだろう!」

なにかこう、らんぼうな、むごたらしい言葉をつかわないと、感じがでないので、リーロフのまねをするのも、らくではなかった。

「海坊主て、なんですか」

水兵の一人が、ききかえした。

「海坊主を、貴様たちは、知らないのか」と太刀川はわざと肩をそびやかしたが、考えてみると海坊主なんてものは、日本の話にだけあるおばけらしい。

「海坊主とは、海にいる幽霊のことだ」

「海にいる幽霊、ははあ、吸血鬼のことですか。かねてうちの母から、海中にはおそろしい吸血鬼がすんでいると聞いていましたが、な、なーるほど」

と、水兵はほんとうにして、にわかにがたがたふるえながら、前後左右を見まわしたのであった。

リーロフにばけて

「さあ、そいつのしまつができたら、さっきの命令どおりに、はやく商船の中にはいりこんで、積荷をとりだすんだ。はやくやらないと、吸血鬼が、船の中のものを食いにやってくる。