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たいへいようまじょう
太平洋魔城
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页
つづいてパン、パン――
ぴゅーんと、艇長の頬をかすめて、弾は窓をつらぬき、外へとびだした。
「うー」
艇長は、うめいて、ぴたりと床にはらばった。何やつだと思った時、
「動くな。動けば、命がないぞ!」
聞きなれない太いこえが、ダン艇長の頭のうえからひびいた。
艇長は、勇気をふるって、首をうしろにねじむけた。と、その時、
「ああ、――」
艇長の目はレンズのように丸くなった。
彼は一たいそこに何を見たか。
一挺のピストルを握った膏薬ばりの手!
その手は、まぎれもなくあの老夫人、乗客ケント老夫人の手だった。
いや、姿は老夫人であったけれど、その鼻の下には、赤ぐろい髭がはえていた。大きな膏薬がはがれて、その下からあらわれたのである。
変装だった。
「一たい、き、貴様は何者だ!」
ダン艇長は、さすがに勇気があった。
「なんだ。おれの名前を聞きたいというのか。ふふん頭のわるいやつだ」
と老夫人にばけていた男は、にくいほど落ちつきはらって、無電室にはいり後の扉をしめた。そしてピストルを、ぐっとダン艇長の鼻さきにつきつけ、
「写真電送をうけるのが、も少し早かったら、君は、おれのりっぱな肖像を、手に入れたことだろう。