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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

「さあ、ケレンコさん。これで胴中をゆわえて、僕と一しょに早くきて下さい」

「ちょ、ちょっと待て。わ、わがはいはこまる。誰か外の艇員をつれてゆけ」

ケレンコは一歩後ずさりをした。

「何をいっているのだ、ケレンコ! ほんとに命が大事だと思う者がゆかなければ、この艇をすくうことはできやしないよ。艇長たちは、暴風雨相手に操縦することだけで一ぱいなんだ。これはどうしても、君と僕の二人がやるべき仕事のようだね」

「うーむ」とケレンコはうなった。そして後をふりむき、

「おいリーロフ。君はわがはいよりも、はるかに技術者で、力がある。君がゆけ」

すると、さっきから二人のおし問答に、耳をかたむけていた大男のリーロフは、何を思ったか、おおきくうなずくと、

「よし、じゃ、おれがゆこう。ケレンコ、こっちの艇員どもは、君にあずけたよ」

といって、彼はピストルをポケットにしまいこむと、太刀川青年に見ならって、麻綱を胴中にぐるぐるとまきつけた。

大冒険!

このままほうっておけば、艇は墜落するよりほかないのだが、それにしても、諸君、太刀川青年はすこし、やりすぎたのではないだろうか。この暴風雨中に、艇外へ出て、方向舵をなおすなんて、人間わざでできることではない。