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たいへいようまじょう
太平洋魔城
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页
リーロフは、歯をむきだして、あざ笑った。それから彼は、方向舵の方へ、からだをうつしていった。
太刀川は頭を艇にすりつけ、死んだようになっている。
リーロフは、ふたたび斧をふりかぶった。そして方向舵のまがり目をめがけて、ガンとうちこんだ。
斧の刃がうまくはいった。ぶーんと音がして、方向舵は生きかえったように、つよくはねかえって、もとの位置にもどった。その時、
「ぎゃ!」という妙な声、
「おや!」と頭をもたげた時には、今の今まで前にいたリーロフの姿が見えない。
太刀川は、びっくりして下を見た。
「あ、あれは?」
艇の下方で、リーロフが綱のはしにつかまって、ブランコのように大きくゆれているのを見た。リーロフは、もとの位置にはねかえった方向舵にはじかれて、艇の胴体からすべり落ちたのだ。だがもう一つおどろいたことがあった。リーロフの胴をゆわえていたはずの綱がとけて、彼はわずかに、そのはしをにぎっているのであった。
「あ、あぶない!」
と、太刀川がさけんだ時は、もうおそかった。リーロフが、力つきて綱をはなしたのだ。あやつり人形のように手足をばたばたうごかして、下に落ちてゆくリーロフ! その顔が赤ペンキをぶっかけたように見えたのは、方向舵にはねられた時にけがをしたのでもあろうか。