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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

「綱をゆるめて、貨物室の窓をやぶって、外へとびだしました」

「え、外へとびだしたか。どっちへ落ちた」

「あ、こっちです。見えます見えます。ほら、あそこへ落ちてゆきます」

艇長ダンは、窓にかじりついた。その時ケレンコが、落下傘をひろげてふわりふわりと落ちてゆくのがみとめられた。

「おお落下傘を、どうしてケレンコが? ああ、しかしあれは本艇の落下傘ではないな」

「そうです。艇長。ケレンコは服の下に、あの奇妙な落下傘をしのばせていたんです」

「そうか、あんなものを持っていたか。ざんねんだ。とうとう二人ともつかまえそこねた」

艇長は、くやしそうにさけんだ。が、あれほど、行手をさえぎった雲が、どこかへふきとんでしまって、すぐ目の下に、青々と水をたたえた大海原が見えだした。その時であった。

「艇長、ガソリンが、もうすっかりなくなりました。まもなくエンジンがとまります」あわただしい注進。

「なに、ガソリンがついにきれたか」

ああ、マニラから遠くはなれた北方の洋上に、わがクリパー号は、着水しなければならぬのか。艇内百余の命は、これから一たいどうなるのだ。

「あ、あれはなんだ?」