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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

いつのまにか、窓によっていた太刀川時夫が、おどろきの声をあげて、はるかかなたを指さした。

艇長は、その方を見た。雲の切れめをかすめて、とつじょ、洋上に姿をあらわしたのは、今まで見たこともない、ふしぎな大海魔だった。

おお大海魔

サウス・クリパー艇は、この時、海面からわずか三、四百メートルのところを飛んでいた。

「ダン艇長、あれが見えませんか」

さすがの太刀川も、色をうしない、そういうのも、舌がこわばって、やっとだった。艇長も教えられるまでもなく、怪物の姿に気づいていたのだが、あまりの恐しさに、声が出なかった。半分気がとおくなって、ふらふらと窓にたおれかかった。

「艇長、あの怪物はどうやらこっちを向いているようですぜ。あ、うごいています。すぐ艇員に命令して、武器をもたせるように――」

「武器――」と艇長はうめくようにいったが、首をふり、

「いや、とてもだめだろう。あれを見たまえ。まるで、煙突が鎧をきたみたいじゃないか。あんなにかたそうでは、小銃の弾なんか通らないよ。そのため、かえって怪物を怒らせるようなことがあっては……」

煙突が鎧をきたようじゃないか!