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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

13 食魔

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,235 字 · 22 页

青空文庫

「危なかったな、松尾さん、――私は本能的に危険を感じて、窓の外から見張っていたのです」

「有難う、江守さん」

「傷は?」

「大した事は無いようですけれど」

「早く手当をしなきゃ――」

「大丈夫です」

あまりの激動に医者を呼ぶ智恵も浮かばず、江守銀二は胸からブローチを引きちぎるように外し、真新しい側の卓子掛けを取って巻きかけました。

「江守さん、そのブローチの裏を見て下さい。私は、――私は今でもそれを持っていたのです」

葉子の手は、卓子の上に置いた血染めのブローチを指します。

「?」

江守は何心なくそのブローチを取って見ると、母親らしい年取った婦人の豆写真をはめ込んだ金の矩形の台座は、何んと古風な二分金をそのまま使ってあるではありませんか。

「あ、矢張りあなただったのか。私も春の独唱会で初めてあなたを見た時から、そんな気がしてならなかったのです。――今晩あんなことを言ったのも、そのためでしたよ。私は矢張り孝行娘を見付けたのだ、丁度十年目で」

「嬉しい、江守さん」

「有難い」

二人は場所柄も忘れ、処女の胸をひたした血潮も忘れて、犇と手を取合って居りました。

「ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ」