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きぞくひがん
奇賊悲願
海野 十三
烏啼天駆シリーズ・3
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,375 字 · 19 页
又もや同じような服装の刑事に違いない男が寄って来た。
「君は毎晩おれのところへ火を借りに来るじゃないか」
と、貫一はもうたまらなくなって、前後の見境もなく、そんな言葉を吐いてしまった。
「えっ、何ですって、毎晩旦那の前に私が現われますって。へッ、冗談じゃありませんよ、お目に懸るのは今夜が始めてで……」
刑事は、そういって否定した。貫一の予期したとおりであったので、彼はほっとした。かの刑事が立去る後姿を、貫一は注意力を傾けて見ていたが、それは満足すべきものであった。なぜなれば、もし彼の刑事が昨夜貫一が撃って右脚を砕いた刑事と同一人だったとしたら、どんなに幸運に考えても足をひきそうなものであったが、彼はすこしもそんな風に見えなかったのである。もっとも、よく考えてみれば、右脚を失った人間が、その翌晩平気な顔をして煙草の火を借りに出て来られるものか来られないものか、すぐ分ることであった。
夢徳寺から弥勒菩薩の金像を背負って出で来た貫一の行手に、またもや縞馬姿の刑事が立ち塞ったのには、さすがの貫一もぞっとした。毎晩の如く現われて尽きる模様もない刑事の執念――というか、徹底した警戒ぶりに、貫一は日頃の自信が崩れ出したのを認めないわけに行かなかった。