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おくさまとおんなこじき

奥さまと女乞食

小川 未明

「教育研究」1930(昭和5)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,070 字 · 9 页

青空文庫

女のおぶっている子供は、脊中で、泣いていました。

「どうして、そんなに、その子は泣くの?」と、奥さまは、聞かれました。

すると、女乞食は、訴えるように、奥さまの顔を見上げて、

「この寒さに、かぜをひいたのでございます。」と答えた。

これを聞くと、奥さまは、自分の体に、悪寒を感じたような気がしました。かぜをひいているのに寒い風にあたってはよくないだろう。そして、こんなにうす着では、ますます冷えるばかりだろう。しかし、この女には、どうすることもできない。

「まあ、それはかわいそうに……。」と、奥さまは、同情されました。なんといって、なぐさめたらいいか、奥さまには、わからなかったのでした。

奥さまは、内へはいって、もちや、お菓子や、また、紙に包んだ銭を持ってこられて、

「帰ったら、この子にやってください。」といって、女乞食に渡されました。

乞食は、目に涙をためて、幾たびも幾たびも頭を下げて、窓の下を去りました。

後で、独り、奥さまは、ぼんやりと、思われたのです。もし、これが、うちの子であったら、どうだろう、あのかわいい坊やが、かぜでもひいたのだったら、どうだろう? 私は、こうしていられはしない。