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おくさまとおんなこじき
奥さまと女乞食
小川 未明
「教育研究」1930(昭和5)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,070 字 · 9 页
やさしい奥さまがありました。あわれな人たちには、なぐさめてやり、また、貧しい人たちには、めぐんでやりましたから、みんなから、尊敬されていました。
冬になると雪が降りました。そして、いままで、外で働いていたものは、仕事をすることができなくなりました。家にいてさえ、寒い日がつづいたのであります。
「ああこんなような日には、食べるものもなく、また、たく薪もなく、困っているものがあるにちがいない。それを思うと、私たちはしあわせだといわなければなりません。」
奥さまは、外を見ながら、こんなことを考えていられました。すると、窓の下を旅人がわらじをはいて、歩いてゆきます。また、重い荷をそりにつけて、男が、うなりながら引いてゆきます。つぎには、あわれな女乞食が、子供をおぶって、あちらからやってきましたが、日ごろから、やさしい奥さまが、窓をのぞいていられたので、頭を低く下げて、恥ずかしそうに、
「どうぞ、奥さま、なにかめぐんでやってください。」と、願いました。
女の身一人でも、この季節に食べてゆくことは困難であろうのに、こうして、子供があっては、なおさら、困るにちがいないと、奥さまは深く同情せられました。