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おくさまとおんなこじき

奥さまと女乞食

小川 未明

「教育研究」1930(昭和5)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,070 字 · 9 页

青空文庫

なんで、帽子のことを、この気の毒な人に対して、とがめえようと思いました。

ああ、何人が、つぎのような事実を知ろう。――脊中の、病気の子供が、赤い帽子をほしがったので、あわれな母親は、もらい集めた金で、町にいって粗末な赤い帽子を買って、それを子供の頭にかぶせてやりました。おしゃべりの女房が、見たというのは、それだったのです――

雪の上を明るく照らす、太陽は、すべてを知っていました。そして、その子が死んで、うずめられたときに、その赤い帽子をかぶってゆきました。

日ましにあたたかになりました。雪は、降らなくなって、地に積もったのも、ぐんぐんと消えてゆきました。小鳥は、山から、里の方へと飛んできました。そして、うす紅色にふくらみかけたこずえにとまって、いい声で、さえずりはじめました。

いっさいを平等に、公平に、太陽は、そのあたたかな光で輝かしたのです。このとき、こずえの下の雪の中から、坊ちゃんの赤い帽子が、いくらか色がさめて出ました。

「おや!」といって、奥さまも、女中も、驚きました。それは、乾かしている時分に、ねこか、なにかが落として、その上へ雪がかかったのでした。