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じょよう
女妖
江戸川 乱歩
01 前篇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,691 字 · 20 页
二
今のあなたは、どこへでもついて来る心境だわ。そうでしょう」
「でも、ほかの人に会いたくないんです」
浩一は婦人の夫や子供や召使のことを考えていた。
「もちろん、そんなことわかっているわ。あたしは家族なんてないのよ。ひとりぼっちで、アパートにいるのよ」
婦人は飲みものを半分ほど残したまま立ち上がった。浩一はまだ飲み物を注文さえしていなかった。
婦人がカウンターの方へ歩いて行くので、浩一も立ち上がったが、すぐ目の前に横丁に面したガラス窓があった。そのガラスの外から、大きな人の顔が覗いていた。何かギョッとするような顔であった。浩一は婦人のあとを追うために、それをチラッと見ただけで、入口の方へ急いだが、歩きながら、今のは、サンドイッチ・マンの、あの壁のような白粉の顔だったということを意識していた。
二
婦人は車を拾って、「麹町一口坂の都電停留所のそば」と命じた。車の中では殆んど口をきかなかった。浩一は二人の服地を通して伝わって来る柔かい温か味に気を奪われていた。
それは高級ホテルのようなアパートであった。小さな窓のある管理人の部屋の前を通って、階段を上がると、二階の廊下のはじに婦人の部屋があった。