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じょよう
女妖
江戸川 乱歩
01 前篇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,691 字 · 20 页
一
一
いつ、どこで、どうして、死ぬかということが、ただ一つ残っている問題だった。
青山浩一は、もと浜離宮であった公園の、海に面する芝生に腰をおろして、向うに停泊している汽船を、ボンヤリと眺めていた。
うしろには、まっ赤な巨大な太陽があった。あたりは見る見る夕暮の色を帯びて行った。ウイーク・デイのせいか、ときたま若い二人づれが通りかかるほかには、まったく人影がなかった。
伯父のへそくりを盗み出した十万円は、二十日間の旅で遣いはたした。ポケットには、辛うじて今夜の宿賃に足りるほどの金が残っているばかりだ。
温泉から温泉へと泊り歩いて、二十一歳の彼にやれることは、なんでもやって見たが、どれもこれも、今になって考えると、取るに足るものは一つもなかった。あの山、この谷、あの女、この女、ああつまらない、生きるに甲斐なき世界。
伯父の家へは二度と帰れない。勤め先へ帰るのもいやだ。自転車商会のゴミゴミした事務机と、その前に立ちならんでいる汚れた帳簿を思いだすだけでも、吐きけをもよおした。
暮れて行く海と空を、うつろに眺めていると、またあの幻が浮かんで来た。空いっぱいの裸の女。