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おんなごころのつよければ

女心の強ければ

豊島 与志雄

「女性改造」1950(昭和25)年8月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,011 字 · 94 页

青空文庫

そしてその影が、彼の静かな言葉の冷酷な感じを一層深めた。機械的な或るいは事務的なものの持つ冷酷さである。感情の片鱗も認められなかった。

長谷川はやけに、皿のハムをフォークで突っついた。それがまた自分でも忌々しく思えた。ビールを一気にあおって、柿沼を見つめた。

「あなたの言葉通りを、あのひとに伝えておきましょう。だが、解決をつけるには、どういうことをお望みですか。例えば、あの家から出て行ってしまうことですか。」

「いや、あの家は、わたしの名義にはなっていますが、千代乃さんのものです。いつでも名義変更は致しましょう。」

「それでは、ほかに、どうすればよろしいんですか。」

「わたしと、わたしの娘たちに、はっきり挨拶をして貰いたいものです。」

「千代乃さんから……。」

「そうです。ほかに誰もいないではありませんか。」

長谷川は身内が震えるのを覚えた。

「あなたは、あのひとを侮辱したいんですね。」

「いや、どうして侮辱などと考えなさるんですか。単に形式にすぎないことですよ。」

「形式による侮辱でしょう。分りました。あなたは人間を道具扱いしていらっしゃる。あなたにとっては、人間の感情なんか問題じゃないのでしょう。