轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
おんなごころしゅうい
女心拾遺
矢田 津世子
「文学界」1936(昭和11)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,514 字 · 36 页
今では慶太郎を唯ひとつの希望にして生き甲斐を感じてきた老夫人は、それだけに、慶太郎の裡に良人を見た時には動揺した。若しかしたら、慶太郎は自分と結ばれているよりは、より根深く良人と結ばれていはしないか。そんな気がしきりにする。そして、この父子をおしもにまかせては寸時も家を開けられぬ、と用心する。良人や息子を女中にまかせて安気に外出の出来る主婦は世に何人いるだろうか、とそのことにも夫人の思いは及ぶのだった。
唐沢氏の座席からは少し頸をのばせばおしもの並べた牌がひと目で眺められる。おしもに必要な牌を唐沢氏が心して投げてやっている。老夫人は、そのことに先刻から気がついていた。その唐沢氏のおかげで、おしもは二度も上っている。
慶太郎はそのたびに眼を円くして、
「今夜はおしもの当りだね。奢れ奢れ」
と巫山戯かかった。
「あらいやでございますよ。お坊ちゃまは」
おしもは大仰さに手を振って、きゃっきゃっと笑いこけた。
「ほら、また、お坊ちゃまが出た」
慶太郎が威かすつもりの大声をあげると、腹をかかえて笑っていた唐沢氏が慶太郎を突っついて、
「お坊ちゃまの番だよ」
と教えた。