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じょせいのれきし
女性の歴史
宮本 百合子
文学にそって
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,758 字 · 43 页
経験だったろう。ところがそうではなかった。頭から脳髄をとり、心臓をつぶしてしまって、ただ一つの忍耐という形の中に男も女も干しかためられてしまった。その石にされた心臓、そして脳髄をすりつぶされたような頭に鉄兜をつけて、毒瓦斯マスクをつけ、そしてみんなが運命を賭し、生命を賭した。日本の婦人は、世界の婦人がそれを信じかねるような程度まで自分の愛情さえ主張することが出来なかった。この状態に対してわたしたちはどう抵抗出来ただろうか。権力で戦争に引張り出されるか、さもなければ戦争はいけないという人間として牢屋に引張られた。このなかに云いつくせない惨酷を自分の意志で踏み込んだ経験としてではなく受取った。私どもは人間として誇るべき何ものもない戦に追いたてられた。全く家畜のように追込まれた戦争で、自分たちを犠牲にして来ているために、殆ど夢中で体だけで苦しさに耐え、文学をつくるところまで精神を保っていることが出来なかった。あの当時は女も男も夢中で生きていた。あまりに受身で過ぎた。民主主義文学への翹望は高いのに、何故戦争に対する人民としての批判をもった文学、婦人が母親として、愛人として、また婦人に対して重荷の多い社会の中で経済的に自分が働いて家の柱となって来たその経験について、女の人が文学を書き出さないか。