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ようえい
妖影
大倉 燁子
「オール読物」文芸春秋、1934(昭和11)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,489 字 · 22 页
三、攣える手
「遺伝でいらっしゃるのじゃありませんか、貴方も神経質のようだし」
お父さんは微笑して云った。
「私ですか? 私は至って呑気者ですよ。むしろ無神経に近いかも知れません」
何云ってるんだ。と私は心で笑った。それを彼は直ぐ見て取ったものか、急に思い出したように云い直した。
「ああ。貴方は何んでしょう? 私が何か物を取ろうとする時に変な手付きをやるもんだから、それを仰しゃってらしたんでしょう? しかしあれは神経痙攣じゃありません。ある恐しい感動の結果ああなったんです」
「恐しい感動? どんなことなんでしょう?」
私は好奇心から思わず瞳を輝かせた。
三、攣える手
彼は低い調子で語るのだった。
「娘は幼少の頃から心臓が弱かったと見えて、時々発作を起しますので、いつかは恐しい変事が突発的に起って来るのじゃないか、と絶えず不安に襲われて居りましたのです。
ところがある日、庭を散歩して捨石につまずき転んだ拍子に、娘は息が止ってしまいました。医者は無論死んだと云いますし、実際死んでしまったのに相違なかったんです。私共は一日二晩、娘の傍を離れずお通夜をいたしまして、私自身で娘を棺の中に納めました。