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ようかいがくこうぎ
妖怪学講義
井上 円了
02 緒言
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,679 字 · 35 页
に過ぎん。余、もと無資無産なれば、実業を興して民力の伸暢を助くることあたわず。また、世情に暗く事理に通ぜざれば、政治を論じて国憲の拡張をはかることあたわず。ゆえに、その妖怪研究に着手したるは、余が衷情のやむべからざるに出ず。請う大方の君子、その微衷を察してこれを推恕せよ。
哲学は余が専門とするところなれば、年来多少これを研究したるも、理学、医学に至りては、余の全く知らざるところなり。しかれども、この部分を欠きて妖怪学を完結することあたわざれば、ここにその二科を加うるに至りたるも、その説明のごときは、余の憶測をもって論断を下したるものすくなしとせず。これまた、専門の諸士の批正を請わざるを得ず。しかして、哲学に属する部分も、その学とも〔に〕既設の学科にあらずして未設の学科なれば、余の独断憶想にかかるものまた多し。もしその誤解に至りては、他日再考のうえ訂正を加うることあるべし。余自ら知る、この事業は一人一代の力よく成功を期すべからざるを。けだし、その大成のごときは、数世の後をまたざるべからず。ゆえに余は、ただその苗種を学田中に培養するのみ。
妖怪の事業は多く東洋に伝わるものを収集し、西洋に存するものはわずかに参考として掲ぐるに過ぎざるは、その研究の目的、わが国の妖怪を説明するにあればなり。