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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
それはこじつけかもしれぬ。しかし根も葉もないこじつけではあるまい。一人居の静かすぎる暮しから忙しい主婦への激変はイビキのもとの一部であり得ぬとは思えぬからだ。女にとってそれは身も細る恥かしさである。できることならイビキなどかきたくない。へんとう腺の手術のようにイビキが手術で解決できるなら、自分もそれをうけたいとミネは思う。ミネのように夫や娘からいたわられるイビキでさえもそう思う。ねむっているまのイビキの責任まで女は無意識に負おうとするのだ。しかしねむった間のいびきのことまで書き立てられる女の立場には何か割り切れないものがある。夫のイビキがこわくて戻ってきたという女があるだろうか。あるかもしれぬがないように思う。妻がイビキをかくので離縁したという男があるだろうか。わからぬ。しかしイビキをかく女だと始めからわかったら、縁談はおそらく破れるだろう。男はどうか。そんなことはあるまい。イビキは男の特権なのだろうか。男だとてイビキはかかない方がよい。野村はきっとイビキの出ないたちの男なのだろう。だがもしも、閑子ではなく前の妻がイビキをかいていたとしたらどうだろう。